OJT研修の目的・内容とOJTのメリット・デメリット
目次
ビジネスセミナー
部下・後輩へのOJT(職場内指導)の進め方を学ぶ
OJT研修とは
OJT研修は、OJTトレーナーが、効率的にOJTを実施できるように、OJTトレーナーに必要なスキル・知識やOJTの正しい取り組み方を理解するとともに、自己の成長につなげるマインドセットを行う研修です。
OJTとは
OJTとは、「On-the-Job-Training」の略で、実際に職場で業務の実践を行いながら、必要な業務知識を身につけていく教育手法のことです。新入社員や若手社員に対して経験豊富な先輩社員が、実際の業務を題材に、知識やスキルの伝達を行っていくスタイルであることから、座学やマニュアルだけでは伝わりにくい、業務の感覚的で繊細な部分についても身に付けてもらいやすいという特徴があります。
研修の狙い
- OJT担当者の役割を理解する
- OJT担当者として新人・後輩の育成計画を考え、計画を実行していくステップを学ぶ
- OJTの進め方を理解し、ケーススタディを通じて指導ポイントを習得する
プログラム
※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。
1.OJTの重要性
(1)OJTの意義とは
(2)OJTの目的を明確にする
(3)後輩育成の意義【ディスカッション】
①教えることによる教える側のメリット
②教えられることによる教えられる側のメリット
③OJTによる会社のメリット
2.OJT担当者の役割
(1)OJT担当者の役割とは?【ディスカッション】
(2)会社・上司からOJT担当者への期待
①仕事の目的を確認する
②会社の考え方の軸をぶらさない
(3)私の理想のOJT担当の先輩像とは【ディスカッション】
(4)OJT担当者が主体的に取り組む
3.OJTの効果的な進め方
(1)新入・若手社員を取り巻く背景
(2)価値観の違いを理解する
①IJT担当者と教えられる側との認識ギャップ
(3)自分が新人の時を振り返る【ディスカッション】
(4)効果的な指示の出し方
4.OJTの具体的な進め方
(1)OJT育成計画を立てる
①目標レベルと時期を明確にする
②新人・後輩のレベルを理解した育成計画を立てる
(2)新人・後輩を動かす伝え方
(3)報告を徹底させる
①報告しやすい先輩と報告しにくい先輩【ディスカッション】
②報告しやすくなるコツ【ペアワーク】
(4)成長させるために必要な「褒め方」
(5)業務の基礎を習得させるために必要な「叱り方」
(6)タイプに合わせた指導を行う
5.ケーススタディートレーニング【トレーニング】
(1)ビジネスマナーが身に付いていない新人
(2)何度も同じミスを繰り返す新人
(3)愚痴が多く、常に不平・不満を言う後輩
(4)自分から報告をしてこない後輩
※ケースについてはカスタマイズいたします。
6.OJT育成計画を考える【ワーク】
7.まとめ
OJTとOff‐JTとの違い
OJTと対比されるOff-JTは「Off-the-Job-Training」の略で、職場での業務を離れて行う教育手法のことです。講師は、外部に依頼するか、社内で指名することとなります。又、育成対象者の具体的職務やバックグラウンドが多岐にわたる可能性があり、全社的な観点から研修テーマを選定する必要があります。
一見、相反する教育手法のように感じられますが、Off-JTには計画的・体系的に知識やスキルを身に付けてもらいやすいという特徴がありますので、Off-JTを通じて基本的な知識をインプットした後に、OJTでアウトプットすることで、業務に必要な知識が、より効率的に吸収され、効果的な社員教育が実現できます。
OJTのメリットとデメリット
(1)OJTのメリット
OJTのメリットには以下のようなものがあります。
①教えられる側のメリット
▶個人の特性に合わせた指導が受けられる。
OJTでは、配属先の状況や個人の特性・経験などに応じた内容で教育を行うことが可能です。
一方、Off-JTでは、様々なバックグラウンドを持つメンバーに対して研修を行うため、どうしても全社に共通する画一的な内容となります。
▶実際の業務を通じて、実践的な知識・スキルが身につく
実際の業務を通じて実践できるので、座学やマニュアルだけでは伝わりにくい、感覚的で繊細な部分についても身につく。
▶フィードバックをすぐに受けられる
実践した際に、出来たことや出来ていないことのフィードバックを受けやすく、PDCAサイクルを回すことで、自発的に成長できるようになる。
②教える側(OJTトレーナー)のメリット
▶教える側のスキルアップにつながる
教育を受ける方だけでなく、指導に当たるOJTトレーナーも成長するということが、現場ではよく見られます。
OJTトレーナーは、指導する際に業務を復習することになり、自分自身の理解に不明瞭な点などを補強し、スキルアップにつながるからです。
③会社側のメリット
▶育成コストの削減
Off-JTと比較して、講師を外注したり、職場を離れ、一か所に集まってもらうことがないため、育成コストを抑えることが出来きます。
▶社員の早期戦力化
入社したばかりの新入社員には、担当する業務と具体的な取り組み方法を明確に伝え、基本的な内容から始め、本人の個人の特性・経験などに応じて難易度を上げることで、早期戦力化を図ることが出来ます。
▶コミュニケーションの活性化
OJTを通してOJTトレーナーとのコミュニケーションが活性化されます。特に、新入社員の場合は、相談できる同期などがおらず不安を感じている場合も少なくありません。OJTトレーナーが相談相手にもなることで、安心感を提供することが出来ます。
(2)OJTのデメリット
一方、OJTには、以下のようなデメリットも存在しますので、注意が必要です。
①教えられる側のデメリット
▶OJTトレーナーの能力によって教育に差が出やすい
OJTは、教えられる側の個々の状況に合わせて柔軟な指導ができるメリットがある反面、OJTトレーナーの能力によっては、教育の質に差が生じる可能性があります。
▶配属先の業務に直結する知識・スキルの習得にとどまる
会社としては基本として身に付けてほしい知識やスキルであっても、配属先では現実に生じないといったこともあります。又、実際の業務で発生した目の前の事項を優先して指導した場合、場当たり的となり体系的な指導が出来ないことになります。
②教える側(OJTトレーナー)のデメリット
▶教育計画の作成に手間がかかる
OJTを効果的に行うためには、OJTトレーナーが、教育計画を作成する必要があります。一方OJTトレーナーは、中堅・若手社員として、日常業務もこなさなければなりませんから、大きな負担となることがあります。
③会社のデメリット
▶OJTトレーナーのリソースを、業務以外に割くことになる
OJTトレーナーの時間を教育に充てることは、短期的に見ればデメリットと考えることが出来ます。又、OJTトレーナーの繁忙感が強ければ、教育が後回しになることも考えられますので、会社としては、OJTトレーナーのモチベーションを維持する施策を検討する必要が生じます。その対策として有効なものが、OJT研修であるとも言えます。
OJT研修の目的と内容
OJT研修を行う目的・内容は、大きくは次の4つです。
⑴OJTトレーナの役割期待を理解する
⑵OJTトレーナーとして新人・後輩の育成計画を考え、計画を実行していくステップを学ぶ
⑶OJTの進め方を理解し、ケーススタディを通じて指導ポイントを習得する
⑷新入社員や若手社員の傾向を理解する
それでは、具体的にご説明していきます。
(1)OJTトレーナーの役割期待を理解する
OJTトレーナーとしての役割期待を理解しないまま、OJTに取り組んだため、ただ忙しさが増えただけと感じてしまうOJTトレーナーは少なくありません。
OJTトレーナーには、
▶OJTは、企業を取り巻く環境の変化が速く、労働力が不足している今、自社の経営戦略を達成するために必要な「育成対象者の早期戦力化」と「早期離職の防止」に重要な取り組みであること。
▶OJTトレーナーは、管理職となった際に役立つ経験であるとともに、自身を見つめ直す絶好の成長機会であること。
▶ゴールは、単に業務に必要な知識を教えるだけでなく、育成対象者が、自律的かつ主体的な業務活動が行えるように指導すること
以上を役割として期待されていることを理解してもらいます。
(2)育成計画づくりと実行
OJTを効果的に行うためには、個人の特性に合わせた内容と適切な成長スピードで進める育成計画を作成することが必要であることをOJTトレーナーに理解してもらいます。
育成計画づくりにおいての最終目標は、育成対象者が自律的に業務が行えるようになることです。そのためには、どの業務をいつまでにどこまでできるように促すのか、また、そのためにはどのくらいの業務知識や経験が必要なのかを明確にしておくことがポイントとなります。
計画を急ぎすぎると、本人の力量を超え、業務遂行を諦めてしまう可能性があります。又、少なすぎても、ぬるま湯的な職場と感じ、エンゲージメントを低下させることにもなりかねません。やや、ストレッチした計画としつつ、状況を見て、修正を加えるよう心掛けます。
(3)指導に必要なスキルの習得
研修を通じて、以下のスキルの獲得やスキルアップを行います。
▶コミュニケーションやヒューマンスキル
育成対象者を指導していく上で、必要なコミュニケーションやヒューマンスキルを確認します。心理的安全性の構築や、アサーション(自分も相手も大事にして、主張はしっかり行うものの、相手は傷つけない表現方法)を身に付けることが重要です。
▶リフレクションスキル
リフレクションとは、よかった点と改善が必要な点を自ら考えてもらうことで、より深い理解や気づきを得て、今後の行動に反映させることです。OJTトレーナーは育成対象者に、自身の行動を客観的に見つめさせ、経験の振り返りを促すことで、自律的に成長できるようにしなければなりません。
▶効果的な業務指導方法
OJTトレーナーによる実務指導においては、「Show(やって見せる)」「Tell(説明する)」「Do(やらせてみる)」「Check(評価・追加指導する)」の4段階で行う指導方法を身に付けます。
(4)新入社員や若手社員の傾向を理解する
OJTトレーナーは、育成対象者の年代の大きな傾向を理解しておくことが重要です。代表的な捉え方として、「Z世代」と呼ばれる世代について、簡単にご説明します。1990年代後半から2010年生まれを「Z世代」と呼ぶことが多いようです。現在では、10代から20代前半、学生から社会人になって数年経つ人が該当します。
【Z世代の特徴】
一般的に言われているZ世代の代表的な特徴は以下の3点です。
◎ソーシャルネイティブでSNSを活用する
◎キャリアに保守的な傾向がある
◎多様性や社会問題に関心がある
【Z世代の理想的な働き方】
一般的に言われているZ世代の理想の働き方の代表的なものをご説明します。
▶オープンなコミュニケーションを求める
SNSを使った情報収集や体験の共有を日常的に行っているZ世代は、わからないことをすぐに調べられる環境で育ったため、会社でも疑問点を上司や先輩に聞いて、すぐ解決できる環境であることを求める傾向にあります。
▶プライバシーが重視されていることを求める
SNSでの不用意な投稿がトラブルを生むことを知っているため、プライバシー保護に注意を払っていると考えられます。そのため、一部を切り取った体験や私生活をSNS共有したいと感じている一方で、打ち解けた人だけにプライベートなことを話し、私生活について知られることに慎重になる人が多いということを留意して接することが大切です。
▶平等性・合理性を求める傾向がある
SNSが身近にあり、さまざまな意見や口コミ、競合他社の情報が入ってきやすいことから、コミュニケーションも含めて対等であることや、業務内容や評価基準が平等であり、かつ合理性のあるものを求めているとされます。又、ネットに溢れる多くの情報を元にフラットな目で正しさを判断する力に長けているため、「過去からそうしている」というような根拠のない言葉には納得できません。
以上から、OJTトレーナーは、OJTの進め方については、意見をすり合わせる姿勢を持ち、積極的な情報開示を心掛けることが必要と考えられます。
OJT研修を効果的に行うポイント
OJT研修の効果を高める2つのポイントをご紹介します。
(1)OJTトレーナーに役割期待を明示する
OJTトレーナーになることは、トレーナー自身の成長にとって大きなメリットがある反面、日常の業務にトレーナーとしての業務が付加されることになりますので、OJT研修の開始に当たって、人事担当者や研修担当者からOJTトレーナーとして選出した理由や期待する役割について適切に伝え、モチベーションの向上を図ることが大切です。
その際に、必ず、OJTトレーナーとして困ったことが起きた際の相談体制など、会社としての支援体制を伝えることも重要です。
(2)OJT研修にワークショップやケーススタディを取り入れる
初めてトレーナーとなる場合などは、不安を感じることも多くあることからワークショップを通じて、他のトレーナーと教育のゴール設定や教育計画の策定などの意見交換をすることで、不安の払しょくやモチベーションの向上が期待できます。
又、コーチングなどの指導方法のケーススタディを行うことで、座学で学んだことをアウトプットでき、行動のイメージを定着させることができます。ケーススタディでは、OJTの現場でよく起こる事例を用意することで、高い効果が期待できます。